「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない」
マリー・アントワネットが言ったという有名なこのフレーズ。
本当はマリー・アントワネットじゃないとか、
本当は「パンがなければブリオッシュを食べればいいじゃない」だったとか色々いわれていますが。
フランス人とパンは切っても切れない関係。我が夫も、例にもれずパンは大好き。
しかし、「ん~、パンがないから、代わりにお菓子を食べるかあ」とはなりません。
何故なら、パンはパンだから!
ただ、日本人が持つ「パン」のイメージとフランス人のそれは、ちょっと異なります。
パンは毎日買いに行くもの
フランスに行くと、どんな小さい町にも一軒はあるパン屋さん。
大きな町ならば、そこかしこにあります。
フランス語では「ブーランジェリー(Boulangerie)」。
早朝から夜まで開いており、フランス人の食卓を支えています。
基本的にパンは、「毎日買いに行くもの」。
大体は朝にその日食べるパンを買いに行くそう。
昔の日本人が、一度にお米を炊き、おひつに移して3食にあてたという感じに近いかもしれません。
そのため、フランス人の家には、テーブルの上あたりにいつでも、
ゴロンとパンが転がっています。
パンを抱えるフランス人
小脇にパンを抱え、マルシェ(市場)で買った林檎をかじりながら、
ボーダーの服に身を包んで街を歩くフランス人。
いや……見たことないこんな人
コテコテのイメージですが……こういう場合、
大抵のフランス人が食べるのは林檎じゃなくてパン。
お使いを頼まれてパンを買ったのに、
焼き立てのパンの香りにつられ歩きながら何となく食べていたら、
家に着くころには半分くらいになっていた!ヤバイ!
すぐさまパン屋にとんぼ返りして、もう1本買う……というフランス人あるある。
我が夫も経験ありだそうで、ママに頼まれてパンを買いに行ったのに、
家に着くころには明らかに目減りしており、
「パンはどこ!?」と怒られたことがあるそうです。
何しろパンは、老若男女問わず食べるもの。
ベビーカーに乗ってるくらいの幼児だって、歯が生えていればパンをかじったりしています。
「フランス人なら、焼き立てのパンの香りを我慢できるわけがない!」
と夫は言いますが……でも買った後のパンから香りがするの?
袋に入ってるのに? と思うかもしれません。
日本だったら、丁寧に透明なビニールの袋に入れたうえで、
紙袋や手提げ袋に入れてくれますが、
フランスの場合はズバッと紙の袋に入れるだけ。
長さのあるパンなら、半分くらいは外の空気に触れています。
だからこそ、歩きながらでも買ったパンの香りを楽しめてしまうわけです。
バターなしで食べるのはイメージが悪い?
買ったパンは思わずつまみ食いをしてしまうフランス人。
そんな時はもちろん、素のパンを食べているわけですが……
実は何もつけないでパンを食べるというのは、イメージが良くないそうです。
「歩きながら食べるから、お行儀が悪いってこと?」
いえ、違います。
夫曰く、
「何もつけないでパンだけを食べるって、まじで貧乏なイメージなんだよ」
とのこと。
パンに何か挟んで食べる→OK
お皿のソースをパンで拭って食べる→OK
パンにバターやジャムをつけて食べる→OK
パンだけを食べる→……びんぼー……
「だから、レストランでパンが出る時は、必ず一緒にバターが添えられてるんだよ」
ああ、なるほどね。
じゃあ、パン屋帰りにダイレクトにパンを食べるのはどうなの?と聞いたところ、
「それはパンの魅力に負けちゃうから、フランス人ならしょうがないんだ(テヘッ」
という、非常にフランス的な答えが返ってきました。
ちなみにフランスパンは存在しない
ここまで「パン」と書いてきましたが、
フランスで「パンください」と言っても買えません。
「パン……ええと、どれのこと?」と言われます。
そして、日本で言う「フランスパン」。
これも存在しません。
「フランスパン」と呼ばれる長い棒状のアレですが、
フランスのパン屋さんに行くと色んな種類のものが置いてあり、
「バゲット」「フィセル」「ブール」「パリジャン」などなど、
長さや太さによっていろいろな名前がついています。
そんなにいっぱいあっても違いがヨクワカラナイという場合は、
とりあえず「バゲット」と言っておけば大丈夫。
ちなみに「パン」はこれらの総称。
なので「パンください」といっても「どれ?」と言われてしまうわけです。
そしてフランスと言えばで思い浮かぶ「クロワッサン」は、
「パン」の仲間ではなく、日本で言うペストリーである、
ヴィエノワズリー(Viennoiserie)に含まれます。
複雑!
日本のパンに対して夫が思うこと4つ
日本に暮らし始めて、すっかり日本食大好きになってしまった我が夫。
家でも食べるのはごはんにお味噌汁。
しかし時に「ああ、美味しいパンが食べたいなあ……」とかぼやくので、
日本で美味しいとされるパン屋さんに連れて行ったことがあります。
結果、お気に召さぬ。
その理由とは……
食感が違う
バゲットの皮がパリパリすぎて、口の中が痛い。
クロワッサンがパリパリすぎて、ボロボロボロボロ零れて食べにくい。
……ああ、確かにフランスで食べたバゲットの皮は、
パリパリにかたいっていうより「弾力がある」って感じだったし、
フランスパンはパリパリというより「しっとりして」いました。
これはきっと、好みの違い。
ただでさえ湿度の高い日本。
ポテトチップスやおせんべいなど、本来パリっとしてるものがしなっとすると、
「うわ、これ湿気てる!」と嫌がりますよね。
たぶん、パリっとしないクロワッサンとか、
噛んだ時「うにょっ(弾力」というバゲットを食べたら、
「ちょっと、このパン屋のパン、湿気てる!」と食べ●グあたりで燃え上がること間違いなし。
た、たかい……
日本のパン屋さんで、名のあるところだと大体、
バゲット一本400円とか、クロワッサン一個200円ちょいとか、
そんな値段設定。
「た、高い……」と驚愕する我が夫。
まあ確かに、フランスじゃバゲットもクロワッサンも、
100円しないもんね。
ビニール袋に入れないで!
「バゲット焼きあがりました~」とお店の人が持ってきたのをすぐ手に取り、
うきうきでレジに向かって支払いをし、さあ持って帰ろう……
という時に、バゲットがぴっちりとビニール袋に入れられ、
なおかつ封まで閉じられると、「ちょっとまったああああああ」と言いたくなるらしい我が夫。
「まだほのかにあったかいパンをビニール袋で包んじゃったら、
湿気が中にこもるじゃん!だめだめっ、あったかくなくてもだめだめっ」
パンもクロワッサンも、焼き立てだろうがそうじゃなかろうが、
ビニール袋に入れるのはフランス人的にはオドロキなようで。
お店を出た後、すぐさまビニール袋から出していました。
ここはパン屋(ブーランジェリー)……なの?
日本のパン屋さん。
バゲットやクロワッサンに始まり、サンドイッチや調理パン、
はたまた甘いパンまで色々な種類が売ってますよね。
しかしこれ、夫から見ると不思議なようで……
「パン屋はパン(バゲットとか)を扱う所で、
甘いパンは、ケーキ屋(パティスリー)の範疇なのに……
ああ、だから日本で”パティスリー”に行ったら、
まじでケーキしか置いてなかったわけか!」
と、自己完結しておりました。
フランスでパンが食べたければ「ブーランジェリー」へ。
フルーツが乗ってるあまいパンならば「パティスリー」へ。
まあこれ……
例えば外国で、「おにぎり屋」って書いてあるお店に行ったら、
何故か焼き鳥とか丼モノもやってたよ、みたいなものかもしれません。
日本人からしたら、「それ、おにぎり屋じゃなぃ……」と言いたくなる感覚かしらと。
パンはフランスの国民食
日本人の食卓に白米が欠かせないように、
フランス人の食卓にはパンが欠かせません。
夫も日本食を楽しみつつも、
時々思い出したように「ああ、パン食べたいなあ」とか呟いています。
確かにフランスのパンは美味しい。そりゃそうだ。
めっちゃ和食党の私ですら、時に恋しくなるほど。
特に、クロワッサン。
しっとりとした生地で、噛むほどにじゅわあっとバターを感じるクロワッサン。
美味しいんだけど、「うん、カロリー……」と思ってしまうあのバター感。
ちょっと、食べたくなってきました。
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