チップ文化には、馴染みのない日本人には計り知れない沼がある。(多分)
「海外にはチップがあります」と言っても、その国々で微妙に違っていたり、はたまた明文化されていなかったりと、なかなか手ごわい相手、それがチップ。
チップに関してはこちらでも書いてます↓
しかしそれは、何も日本の人が別の国に行って慣れないチップ文化に慌てるというだけでなく、別の国から日本に来た人がチップを渡そうとして受け取ってもらえずてんやわんや……ということもあります。
チップでてんやわんや実話
日本に旅行に来る仏人友達が、時にチップを渡したがる。
「日本はチップの習慣ない」と言っても「感謝の気持ちだから」と譲らず、こっそり居酒屋のテーブルに500円玉を置いて来た友達がいる。
結果。
「お客様!お釣り忘れてます!」
と、店員さんが店の外まで走って追いかけてきた。目丸くしてた。— あんずっこ@フランス夫と日本田舎暮らし (@allez_abricot) 2019年2月13日
この時何が起きたか、ありのままを話すぜ……|д゚)
トーキョーの下町でチップてんやわんや
今から数年前、フランス人の友達が日本に旅行に来て、我が家に滞在していました。その時はまだ東京住まいだった私たち夫婦。 東京都はいえ下町の雰囲気が残る場所だったため、メトロポリタン!な場所と昔ながらの景色が混在する「トーキョー」という町を、友達はいたく楽しんでいました。
そんなある日。我が家のすぐ近くにあった赤ちょうちんのお店で夕食をとろうということになりました。私たち夫婦はしょっちゅう通っていたお店だったので、「ああまた外国の友達連れてきてくれたのね」くらいの反応。しかし来日中の友達はもちろん赤ちょうちんは初めて。そして日本語の読み書きができるわけではないので、壁に所せましと貼られたメニューが全て手書きの日本語(値段も漢数字)という典型的な地元感あふれるそのお店に、「ガイドブック見てるだけじゃ絶対来られない!」といたくご満悦なご様子。
その友達、本国フランスでは自身がシェフで飲食店を経営していることもあり、どんな食材にも果敢に挑むわけ。日本人でも好き嫌いが分かれるあん肝や白子系の珍味、夫は「ぐぎゃあ」と悲鳴を上げる納豆、さっきまで水槽の中を元気に泳ぎ回ってたどじょうのから揚げ(このメニューを注文すると、明らかに水槽の中の土壌の数が減る)まで、出されたものは何でも食べて「(*’▽’)」みたいな顔をしてる。
お酒ももちろんバッチコイで、注文すると一合を超えてなみなみと注がれる日本酒をぐいぐいと呑み、また「(*’▽’)」みたいな顔。その場で覚えた「オイシイ」を連発。そして店員の女の子がカワイイとナンパしようと試みる(これはうまくかわされ途中で断念)。
そうするとお店のご主人も「今日いいXXが入ったから食べてみる?フランスにはないでしょ?」的に何かを出してくれて、それを食べてまた「(*’▽’)」という顔と、テンション高めな夕食時間を過ごした私たち。
いざ会計になりまして。まあ地元の飲み屋さんだからやっすいわけ。金額を見て友達は「ほんとに?何でこんなに安いの?あんなにおいしかったのに!!」とめっちゃ驚き、当然の流れとして「じゃあチップを多めに」となったわけだ。
いやいや日本はサービス料は予め含まれているし、こういう居酒屋の場合は席料としてお通し代を取ってるからチップはいらない、多分置いたところでお店の人も困るからと、夫と二人で説得を試み、しぶしぶチップを置くのを諦めた……と思っていたのが甘かった|д゚)
お店を出て歩いていたら、店員さんが「あのっ、お釣り、忘れてます!」と走って追いかけてきた。何かと思えば、手に握られていたのは500円玉。
友達「あ、それ、チップ」。
おいいいいいいいいいい( ゚Д゚)日本はチップいらないって言ったやろがああああ
何でも、「日本にはチップはない」と言われたのでまとまった金額を置くのは諦めた。でも手元には500円玉がある。この額なら置いておいても……と思ったそうで。
友達「チップなのでどうぞ」
店員さん「いやそんなこと言われても」
友達「いえいえどうぞ」
店員さん「受け取れないのでお返しします」
友達「もらってください(笑顔」
……という終わりのない押し問答が道端で続いたので、もう一度お店に行くことにして、チップは渡さずに持って帰ろうという方向に話をまとめた夫。
友達、明らかにショボン(´・ω・`)としてる。いや、感謝の気持ちを表したいのはわかるよ?わかるけどね……
チップはいらないって言ったでしょーが、人の話を聞けフランス人んんんんんん( ゚Д゚)
夫が思わずチップを貰う側になっててんやわんや
逆に、日本で我が夫がチップを貰う側になってしまっててんやわんやしたこともありました。
今住んでいる場所は、日本海側の港町。時々クルーズ船が寄港する場所でもあります。
2018年のある日。大型クルーズ船が寄港するということで町は沸き立っていました。そして、知り合いのお寿司屋さんがクルーズ客のうち、インド人160人の団体さんの予約を受けたということで、助っ人店員(兼通訳)として駆り出された我が夫。
団体さんの方はお座敷に通して一通り説明をしたら終わりなので、席についてもらえばまあOKという段取り。
そんな時、カウンターに外国人のお客さんが2人来ました。聞けば、クルーズ船のクルー(イタリア人)だという。
日本語はできないとのことなので夫が接客に当たったわけですが、まあ日本のことをよく知ってる。そりゃそうだ、クルーだから今まで何度も日本の港に来ているし。でもこの町に来るのは初めてで、魚がちょう美味しいと聞いていたので、絶対にスシを食べようと楽しみにしてたという話をしたそう。
そう聞くと、お店側も気合が入るというもので、今日のオススメとかを色々と握り、夫は夫でこの町の歴史や見どころ、店内に飾られてる片目だけ黒く塗られただるまの意味とかを話していたら……途中から興奮しすぎて全編イタリア語でお送りするようになるほどの興奮っぷりを見せたクルーのお客さん。
帰り際、当然のごとく「チップを渡したい」と言い出したものの、夫は「いやここは日本だから……」と固辞。お客さんもさすが日本に何度も来ているだけあり、「そうよね、日本はチップ受け取らないものね」と引っ込んだ……
ように見えた( ゚Д゚)
別れ際、「マジでほんとに超グラッツェ!!!」と握手を求めてきたお客さんに応えた夫。手のひらに違和感を感じたそうで。
自分の手に、お札が握らされていたらしい。
「ちょっ、まっ!!」と止めようとしたものの、相手は「チャ~オ☆」と既にお店から出てしまっていた。何たる素早さ、そして日本ではチップを受け取ってもらえないと知っていたからこそこの力業。
ぐっとお札を握らせるというのは、本当ならちょっと失礼だったりもする(夫談)けれど、そこまでして「ありがとう」のチップを渡したかったのかっていうのと、追いかけてチップを突き返すのも雰囲気を壊してしまいそうなので、店長に相談してそのまま受け取ることにしたそうです。
感謝の気持ちが限界突破
「日本ではチップを置かなくていい」というのは、日本に旅行に来る外国人は予め知っていることが多いものの、それでもお店で感激したり物凄く楽しかったりすると、どうしてもチップを渡したくなる気持ちがむくむくと頭をもたげてくるようで……
言うなれば、感謝の気持ちが限界突破?|д゚)
多分、これからも友達を日本に迎えた時にはひと騒動起こりそうな気がします。
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