フランスに観光に行って、英語で話しかけたら嫌な顔をされた。
はたまた、「エクスキューズミー」と英語で言ったら無視され、「エクスキューゼモワ」とフランス語で言ったら応答してくれた。
フランスに行ってフランス語を喋らなかったらこんな目にあった、というエピソードは、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
また、つい最近、ニュージーランド人の友達が仕事でパリに行き、覚えていった「je ne parle pas français(フランス語は話せません)」というフレーズを使ったところ、「チッ」と盛大に舌打ちをされたことにショックを受け、「フランス人っていじわるだね……」と言っていました。
「フランスの公用語はフランス語だから」という理屈はわかりますが、そんなに邪険にしなくてもいいのに……と旅行者なら言いたいところ。
こんなことが起こるのは、フランス人が英語が嫌いだから? それとも意地悪だから?
この件に関して、興味深い話を聞いたことがあります。
フランス語に誇りを持っているから
フランス滞在中、大学の夏期口座で英語のクラスを取った時のこと。フランス人の先生が英語を教え、生徒はほとんどフランス人という面白い状況になりました。
そのクラスで、先生が「英語で話しかけられたフランス人が感じ悪いのはなぜか」という話をし、2つの説を教えてくれました。(もちろん、”フランス人全員がそうだとは言わないけど、の前置きつきで)
まず一つ目の理由は、フランス人はフランス語を非常に誇りに思っているから。
かつてフランスが絶対王政を敷き、とてつもない強国だった頃のこと。ヨーロッパが世界の中心と言われ、そのヨーロッパの中心はフランス宮廷。周辺国の王室はフランス宮廷の真似をし、また、貴族や王族間の第一言語で必須言語はフランス語という、大陸でブイブイいわせてた時代がありました。
しかし世界情勢の変化により王制は倒れ、かつての覇権を失ったものの、現在においても世界の中心だったという名残をみることができます。
例えばオリンピックでは、まずフランス語のアナウンスが流れた後に英語が流れたり、国連の必須言語が「フランス語と英語」だったり……
そしてフランスの国自体も言語の価値をキープすることに注力しています。
よく言われるのが、「アリアンス・フランセーズ」の存在。
アリアンス・フランセーズとは、
アリアンスフランセーズ(フランス語:Alliance Française、略称:AF)は、フランス政府に公認・助成を受けた、フランス語とフランス文化の教育を行う非営利団体である。1883年に創設され、フランス全土に28校、世界138カ国に1000校以上の規模を誇る。
各地のアリアンス組織はそれぞれ独立した自治と法人性を維持しながら、フランス語とフランス文化を促進している。 引用元:Wikipedia「アリアンス・フランセーズ」
……という組織。日本にもあります。
例えば外来語が入ってきた場合、このアリアンス・フランセーズが「この単語は男性名詞か女性名詞か」ということを延々と議論して決めたり(iPhoneは男性か女性か、根拠は……云云かんぬんとか)、時には、英語の名詞をそのまま使わずフランス語に訳して普及させたり……ということも。
むかし、「何でXXXX(←世界共通で英語名のバンド)はフランス語に訳してるのに、ビートルズは”Beatles”のままなの?」ってフランス人友に聞いたら、「知名度的にXXXX<ビートルズだから、さすがにビートルズの名前は変えられないからじゃん?」という適当な答えが。ちなみに「XXXX」の部分が何だったか思い出せない……! あとThe Beatlesを定冠詞だけ訳して「Les Beatles」っていうフランス人もいる……!
英語が苦手というコンプレックスの裏返し
個人的に、信憑性が高いんじゃないかと思う、「英語で話しかけたらフランス人が感じ悪かった」の2つ目。
フランス人、実は英語アレルギー説。
読み書き重視で面白くないといわれる日本の英語教育ですが、フランスも同じタイプのカリキュラム。(最近は変わったかもしれないけれど、今アラサー位の人たちが学生の頃は少なくとも)
そのせいで、英語キライツライという人がかなり多く、EU諸国の中でも英語の成績が良くないんだそうな。
実際、ある英語能力指数テストの国別結果によると……
引用元:読んで身に付く英語勉強法マガジン | Cheer up! English
フランスは32位。
フランスより下位のEU諸国は33位のイタリアのみ。EU加入が新しいブルガリア(22位)やルーマニア(17位)も、フランスよりははるか上。
英語で話しかけられるとコンプレックスを刺激され、静かな逆切れの結果が感じの悪い態度や舌打ちという結果になるのではないか説。
これ、結構的を射てるんじゃないかな~と個人的には思います。
英語で話しかけられてアセる日本人とキレるフランス人
英語が苦手と言われる日本。そしてEU諸国の中では英語のスコアが低いフランス。
両国とも「英語が苦手」なわけですが、いざ英語で話しかけられた時のリアクションがかなり異なります。
片や、「ああ、英語わかんないどうしよう」とアセりながらも何とかしようとする場合が多い日本人。
片や、「チッ、ここはフランスなんだからフランス語でしゃべりなさいよ」という態度なフランス人。
どちらが良いでも悪いでもないですが、もしも本当に、感じの悪い態度が「英語コンプレックス」の裏返しだとしたら……フランス人てちょっと可愛いなと思えてなりません。
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