ニース。
フランスの南東部に位置する町。地中海に面しており、「リヴィエラの女王」とも呼ばれるコート・ダジュールの中心地。季節を問わず、世界中から観光客でにぎわう場所でもあります。
そんなニース。日本でも「ニース風XX」とかは見かけることがありますが……ある日こんなメニューがありました@ファミレス。
南仏の港町のニースのカフェごはんをモチーフにしたというメニューを見て、南仏の港町のニースで育った我が夫が不思議な顔をしてた。 pic.twitter.com/77820n1lc6
— あんずっこ@フランス夫と日本田舎暮らし (@allez_abricot) 2019年2月18日
このメニュー写真を見た我が夫(ニース育ち)が、何だか不思議な顔をしていました。そして絞り出すように、「まぐろがツナなら百歩譲ってニース風と言えなくも……いやでもキノコはない……っていうか、これゴハン入ってるの?で、わさび醤油マヨ?うううう……」とつぶやいていました。
いやでもこれ、「モチーフ」だからさ!「ニースのカフェごはん」って何かよくわかんないけど、あくまで着想を得たってだけだから……まあそもそも、着想元の「カフェごはん(※日本でイメージする、おしゃれなワンプレートで見た目も栄養価もばっちり☆)」がニースにないけどさ!
でもまあ、港町モチーフだからシーフード(まぐろ)が入っていて、あとは日本のワンプレートカフェご飯との融合(魔改造ともいう)で……って、間違っちゃいないかも?
ニースのカフェごはん(笑)といえばニース風サラダ?
そもそもカフェごはんって……って言いだすと、どちらかといえばカフェご飯が苦手な部類に入る私は否定的なことを言い出して本題からずれそうなので止めて、カフェ(で食べてそうな)ごはんについて。
レストランほどがっつり食事!というイメージではなく、ささっとランチに、そしてニースの人が良く食べていてニースのイメージが強いものというと……やっぱニース風サラダ?(Salade niçoise/サラダニソワーズ)かしら。
ランチにニース風サラダ+パンというメニューはとってもポピュラー。サラダとパンなんて、おっしゃれじゃない?(*’▽’)
でも結構なボリュームなんだよ、サラダ。
そもそもニース風サラダとは
「ニース風サラダ」って何度も打ってたら、うっかり「サラダ風ニース」って打ってた。何だよサラダ風ニースって、コワイヨ。
Heaven on a plate! Must be my fave salad this. #SaladeNiçoise pic.twitter.com/sSUFUkCxqE
— Bee Morgan (@BeezzzzzBee) 2014年5月21日
そうそうこれこれ、こんな感じの材料が載ってるのがニース風サラダね。夏場のランチなんかは、スッキリさっぱりサラダをメインなんてこともよくある。だって南フランスの夏、くそあついから。(日差しが凶悪)
ついでにニース風サラダの定義を調べてみると……
ゆでたじゃがいもやさやいんげん・トマト・オリーブ・ゆで卵・アンチョビー・ツナなどを用い、フレンチドレッシングで和えて作るサラダ。◇「サラド・ニソワーズ」ともいう。
あれ、何かニースの人に爆弾投げこみそうな説明になってる……(*’▽’)
これはニースの人に言わない方がいい1:ゆでたジャガイモやさやいんげん
現地ニースのお店で出てくる「ニース風サラダ」にも茹でたじゃがいもがのってくることがありますが、「ニース風サラダってポテトのってるんだよね」と迂闊に言うのは、相手によっては危ない。まじで。
なにがどう危ないのかは後述。
あとさやいんげんじゃなくていんげんだよ!
これはニースの人に言わない方がいい2:フレンチドレッシングで和えて作る
Wikipedia先生によれば
フレンチドレッシング(英語:French dressing)は、アメリカ合衆国で生まれたサラダドレッシングである。
アメリカ合衆国で生まれたサラダドレッシングである。
アメリカ合衆国で生まれたサラダドレッシングである。
アメリカ合衆国で生まれたサラダドレッシングである。
フランス人に「フレンチドレッシングください」って頼んでも「( ゚Д゚)ハァ?」って言われるよ。ていうか大体みんなオリーブオイルに塩とかバルサミコで食べてるよ!!
ニース風サラダには原理主義者がいるから気をつけろ
数年前、日本のネットニュースにこんな記事が上がりました。
ギャグだと思うでしょ?大まじめだからこれ。
しかも、
そんなニースで昨年1月、ちょっとした事件があった。
地元紙ニース・マタン(Nice Matin)が、ニース風サラダだとして、いんげん豆とポテトがたっぷり入ったサラダの写真を掲載したのだ。フランスのほとんどの地域では最も一般的な「ニース風サラダ」だが、保存会らニースの伝統主義者からは大きな非難が起こった。
この時ちょうど私はニースに住んでいて、件のニース・マタンの記事見たから!サラダの写真が出た後、「保存会が写真に抗議」みたいな記事が出て、その後「本当のニース風サラダとは何か?」っていう一面トップの記事が出て……って、憶えてるもん(‘Д’)サラダで論争!?って驚いたもん。
リビエラっ子で同グループ代表のルネ・グラーリアさん(78)は「ラ・カペリーナ・ドル」の活動について、「休暇から戻ったら、それぞれがフランスのあちこちで体験したことを報告しあうんです。私の場合は、マヨネーズをかけたニース風サラダを出されたんですよ。まったく鳥肌がたつ経験だったわ」と話した。
マヨネーズはフランス生まれなのに、ニース風サラダにマヨはダメなのね……
でもね。マヨネーズでこれだけの反応をするこのマダムに、是非私が東京のビストロで出会った「ニース風サラダ」を召し上がっていただきたい。笑顔でボナペティって言いたい。多分怒号が返ってくるけど。
何故って、かりかりベーコンと温泉卵が乗ってたもんね!でもツナもアンチョビものってるんだよ?すごくない?(その大胆すぎるアレンジに、私も一緒に居た夫も「もうこれ、名前から”ニース風”ってとった方がいいんじゃ……」と呟いてしまったのは言うまでもない(‘Д’))
ところで、何故「ニース風サラダ」の材料でこんな論争が起こるかと言えば、記事中にもありますが、
元来、ニース周辺の料理は貧しい人々のためのシンプルなものだった。最初のニース風サラダの材料は、トマトとアンチョビ、オリーブオイルだけだったという。
昔々、まだ避寒地として有名になる前。ニース周辺は貧しく、しかも気候のために野菜が育ちにくいという理由もあったため、「地元で自然にとれる生のもの(※調理してないもの)が入っている」のがニース風サラダの始まり。そのため、「茹でた」じゃがいもやインゲンには顔をしかめる人がいるというわけ。
ニースから来た夫が教えるニース風サラダのレシピ
ここで登場いただく我が夫。ニースに住んでいた時はお店を持っていて、メニューにはニース風サラダがありました。
夫のお店が出していたニース風サラダの材料は、
- サラダ(レタス)
- トマト
- パプリカ
- ツナ
- 茹で卵
- アンチョビ
- 黒オリーブ
- ドレッシング:オリーブオイル+塩、時にバルサミコ
……という、原理主義者を怒らせない(たぶん)レシピ。日本で「南仏家庭料理教室」なんて講座を頼まれて開いた時も、大体このレシピです。(日本だと、パプリカは高いからピーマンでもいいよと言ってる)
別に我が夫は「ニース料理の伝統を守らねば、フンガー!」的に鼻息を荒くしているわけではないですが、もし万が一お客さんに原理主義の人がいた場合にも文句を言われないよう、この材料を選んだんだとか。
ネットでレシピを探しても大体共通のものが出てくるけれど(”ゆでだこ”とか出てくるものは無視していいと思う)、ニース風サラダを作る時の夫のこだわりは以下の通り|д゚)
南フランス人直伝だよ!
レタスはちぎらない
日本でサラダを作るというと、まず「レタスを一口大にちぎり……」と書いてあることがほとんど。料理教室を開いた時も、参加者の方が光の速さでレタスをちぎってしまって夫が「うああああ、それちぎんなくていいのにいい」と言っていた。
レタス、まるまる一枚でいいの。
何故かと言えば、フランスではサラダもナイフとフォークで食べるのと、あとはサラダをメインとして食べる場合は見た目のボリューム感も必要なので、豪華にボリューミーに見せるために、葉野菜はちぎらずに使う、とのこと。
アンチョビはべろんとそのまま。ちぎらない、混ぜない
いざ食べる時に食べやすくするために、日本人ならアンチョビを細かく切ってまんべんなく混ぜたくなる(何ならドレッシングに混ぜ込みたくなる)ところですが、ちょっと待った。
アンチョビは好き嫌いがとっても分かれるため、刻まず、混ぜず、食べたくない人はよけられるように、べろんとそのままのせるべき、とのこと。食べたい人は自分でナイフとフォークで切って混ぜる、食べたくない人はよける……というのは、ある意味ニース流の気遣い?
オリーブは黒!そしてまるごと!
オリーブ丸ごとってしょっぱかったりするから、輪切りのがいいよね……的なレシピを見ますが、だめだめ、ニース人怒るよ!
のせるオリーブは黒いやつ、で、丸ごと。これ鉄則。
以上がニース風サラダを自分のお店で出していた、ニース育ちの我が夫のレシピ。
ただね。お店でも日本でも、このレシピでの「ニース風サラダ」を広めている我が夫ですが、フランス人の中にも「茹でたポテトといんげんは欲しいな~」って人もいるのよ。ニース生まれニース育ちの人でも「イモある方が好き」って。
でもポテトが入ってなければお客さんから「あ、おたくのニース風サラダ、ポテト入ってないのね?」と言われ、ポテトを入れれば「お前んとこのニース風サラダはにせもんじゃ!」と怒る人が現れる……フランス人とはかくも難しいものよのう。※何もフランス人だけの話ではないけど
その国流の料理のアレンジなんてどこにでもあります
何も私、「別の国の料理には敬意を払って改造すんな!( ゚Д゚)」という料理原理主義者ではありません。ある国の料理が別の国にわたって、アレンジが加わって発展して、いつか逆輸入されるなんてこともよくある話だし。今じゃ浸透したカリフォルニアロールだって、フランス人が美味しいって言うヌテラ巻きだって、否定する気は毛頭ございません。
時にからかいたくなっちゃうだけで←
ただ、本来どういうものかを知った上でアレンジが加わったものをおいしく食べるっていうのは賛成派だけれど、元々のモノを知らずに派生したものを「これがXX!!」って言い切っちゃうのにはオイオイと言いたくなります……
例えば、「寿司といえばドラゴンロール!」という人が日本のお寿司屋に置いてなくて文句を言うとか、逆に日本の人が「フランスのレストランで、メインが終わった後にチーズが出てくるって変じゃない?日本だとブルーチーズ盛りとか前菜だよねー」って言ったりとか。
なので私は、例え日本のお店のニース風サラダに温泉卵とベーコンが乗っていようと、「あらあら、豪快なアレンジだわね」と微笑みつつ(時にツイッターにネタとして載せつつ)、有難く食べる所存でございます。
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