謎に包まれた外人部隊日記「フランス人は自分たちで争わない」

謎に包まれた外人部隊日記「フランス人は自分たちで争わない」

外人部隊

イタリア系フランス人の夫を持つあんずっこ(@allez_abricotです

 

フランスに関する本を読むのは割と好きです。Amazonで「フランス」ってキーワードで定期的にラインナップを眺めるくらいには好き。

 

新しく、フランス関連の本を読みました。

 

 

タイトルからして、フランス外人部隊に入り、命の危険を冒しながらもサバイバルした人のシリアスな日記……かと思ったら、何かちょっと違ってたよ!

 

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フランス外人部隊とは

日本で相次ぐブラック企業に関するニュースを見た時に、ふと夫に聞きました。

 

「フランスって、ブラック企業はあるの?」と。

 

夫はちょっと考えた後、言いました。

 

「うーん、企業じゃないけど、外人部隊かな……何しろ、入隊したらいきなり名前をはく奪されて、自我崩壊レベルまで鍛えさせられるらしいから」

 

何かさらっと恐ろしいこと言いましたけど、この夫。

 

レプリカTシャツとか売ってるのね……

 

そんなフランス外人部隊とは、

フランス外人部隊(フランスがいじんぶたい、仏: Légion étrangère, 英: French Foreign Legion)は、フランス陸軍所属の外国人の志願兵で構成される正規部隊である。(中略)

創設以来、180年以上に及ぶ歴史の中で、のべ60万人以上が軍務についた。

引用元:フランス外人部隊(Wikipedia)

……という、歴史もなかなかに古く、かなりの人数が所属してきた部隊とのこと。

 

外人部隊っていうと、冴羽獠的な人がいるところだと勝手に思っていましたよ……冴羽獠がいたのはどこかのゲリラ部隊だけどね……

フランスではニッキー・ラーソン。来年実写映画化されるそうで。

 

そんな勝手なイメージから、冴羽獠みたいな著者が書いた本かと思っていたら、何か違ったわけです。

 

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「フランス人は自分たちで争わない」はめちゃくちゃ笑える

著者はロボットサマナさん。元自衛隊員で何となくフランス外人部隊に行った人。その記録を雑誌「シックスサマナ」に連載したものの、この本「フランス人は自分たちで争わない」はそれの私家版

 

 

元々雑誌用に書いた原稿が、雑誌掲載時にはそのテイストにあわせるため、

「世界ハウス食品劇場」みたいなまったりした雰囲気が「魁!男塾」みたいな雰囲気になっていた

そうな。この本は「世界ハウス食品劇場」テイストの方です。

 

だからか、フランス外人部隊で過ごした血で血を洗う過酷な日々を重厚に描いた!というよりも、「フランス外人部隊に居た人の日記」という雰囲気。軽やかに読むことができます。

 

そして、笑える

 

布団の中で読んでいた時、噴き出すのをこらえて体がぶるぶるしたのだけれど、隣にいた夫に「地震!?」て言われるくらい笑いをこらえてしまった。

 

やっぱり名前は偽名になるらしい

「名前をはく奪される」という夫の言葉通り、入隊時に偽名となるそうで。

著者のロボットサマナさんがつけられた名前は「貞子 誠」……SADAKO MAKOTO。貞子が苗字で誠が名前……って、語呂悪っ!! 両方下の名前だし!

 

表現が秀逸

文章中にちょいちょい出てくるたとえが秀逸。思わず笑わずにはいられません。というか、この本を通しで真顔で読める人は居ないんじゃないかと真剣に思うほど。

 

油断した頃にブハッと笑える話が出てくるんだもの。というか、「なんでこんな表現が思いつくん……?」って、逆に感心してしまうレベル。

 

まずそう思ったのは、わりと冒頭。外人部隊の門をくぐるところ。

 

前述の「貞子 誠」という名前を名付けてくれたのは、外人部隊の門から中に入れてくれた老人。サンタクロースみたいな白く長いひげに帽子、そして迷彩服といういで立ちを見たロボットサマナさんは、

ま、間違いねえ!

これ、外人部隊だよ!

首から上がクリスマスだけど、首から下が戦場だもの!

戦場のメリークリスマスだよ!

 

私、撃沈。笑いをこらえすぎて腹筋が攣る。

 

その他にも、仲間につけたあだ名や、ちょっとした描写で笑いというナイフが飛んでくるから油断は禁物です。

 

この人、持ってる!

本当は真剣な場面で、笑うところじゃないんだろうけれど、手違いで別の国に派遣されるって……!

 

何が起きたか気になる人は、是非読んでみてください。

 

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フランス外人部隊という組織をチラ見できる一冊

 

 

普通に生きて、観光や留学でフランスに行く限りは縁のないフランス外人部隊。

 

一説には世界最強とも言われるものの、名前だけは知っていて、内情まで知っている人は少ないでしょう。フランス人だって、外人部隊について詳しく正しく知ってる人は多くないもの。

 

この「フランス人は自分たちで争わない」では、何となくフランス外人部隊に入ってしまったロボットサマナさんの緩くて笑える日々を読むことができます。しかし、笑いの隙間から過酷さもにじみ出ています。

 

私の友達にOLから陸上自衛隊員に華麗なる転職をした人がいて、話を聞くに30キロの背嚢しょって冬の富士登山とか一般人にはヨクワカラナイレベルの訓練をこなしているそうなんですが、ロボットサマナさんも同じく自衛隊出身。

 

しかしその自衛隊出身者が「キツイ」というフランス外人部隊の訓練。

 

周りにいる仲間は、色々な国から来ていて、中には「兵士になるしかなかった」人たちもいるという現状。

 

そして、「貧血を起こしたら寝転がって足を高い位置にあげるだけで、25リットル輸血したと同じ効果がある」という自衛隊豆知識をさりげなく織り交ぜてくるサービス精神。

 

笑いがそこかしこに埋まっている文章でありながら、世界の現状についてふと考えさせられてしまう一冊です。

 

 

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