引越し。
引っ越すこと。移転。転居。転宅。
引用元:Weblio辞書
住まいを変えるタイミングが訪れるのはどこの国も同じ。
かくいう私も、フランスに住んでいた時は2度(日本往復除く)、
結婚してからも2度の引越しを経験しました。
引越しというと、まず何からするでしょうか。
日取りを決めて、荷物をまとめる?
いやいやその前に、引越し業者の見積もり? 繁忙期だと予約取れないからね!
……というのが当たり前だと思っていたのですが。
フランス人の引越しは……日本人の私から見たら驚愕でした。
引越しに見る日本とフランスの違い
引越しシーズンが訪れる初春になると、引越し業者のCMがTVでこれでもかと流れますよね。
どこの業者もお客をGETしようと、「今ならXX割引付き!」とか、
「他社より一円でも高ければご相談ください!」とか、
あの手この手でじりじりと間合いをつめてくるような気迫を感じます。
私がフランスで引越しを体験したのは2度。
自分で借りていた部屋を引き払う時と、
当時は親友2人とルームシェアをしていた夫が、ルームシェア解散をした時。
その時に感じた、日本とフランスの違いといえば……
引越し業者?なんで??
どちらも、引越し業者には頼みませんでした。
というか、「引越し業者に頼む?大豪邸に住んでるわけでもないのにWHY???」
という意識らしいですよ、あちらの若者は!!
それだけでなく、
「業者に頼むなんてお金もったいないし、それに持ち物パクられたらどうするの」
と思うらしい。
え……「業者が荷物を破損した」ならわかるけど、「パクられたら」ってどういうこと!?
と思うものの、実際にそういうことが起こるらしい。
だから見知らぬ業者には頼みたくない、という理屈だそうな。
じゃあ誰が荷物運ぶの?
業者に頼まないとなっても、運び出さなきゃならない荷物が減るわけでもなく……
一体だれが運ぶのさ、と言いたくなりますが。
それは、家族や友達!!
そもそも、フランスのアパートには「家具付き」という所がわりとあります。
私の住んでいた部屋がそうでした。
ベッド、テーブル、ソファなどなどの大型家具は元々設置されていて、家具を買う必要はナシ!
という物件。
こういう場合は、身の回りのこまいものだけ移動させればよいので簡単。
しかし夫が友達とルームシェアをしていた部屋は、もともとは家具なし物件。
かなり広い3LDKだったのですが、リビングに据えられた大型ソファ2台とか、
色んなところに置かれている棚とか、
キッチンに置かれた巨大冷蔵庫×2とか、
業者でも結構な気合いを入れないとならない量。
しかも。その部屋があったのは、
建物5階、エレベーターなし! という、フランスあるある物件。
業者でも冷や汗かくレベルだぜ……と思ったものの、
友達たちが10人以上集まって運び出していくんだこれが!!
フランスでは当たり前らしいのですが、当時の私は驚愕しました。
だって、いっくら力持ちの若き男子たちとはいえ、
重量級の家具を運び出していくなんて……
しかも、大型バンまで誰かがどこからか借りてきて、
何往復もして引越し先へ持っていくんですから……
フランスの引越しすごいな、と思ったのも無理はないでしょう。
まあ時々、家具を運び出してった誰かの「うわあああ」という悲鳴の後、
ゴン!ゴン!!みたいなノイズが廊下から聞こえたりしたけどね♪
廃棄するものはどうするの?
引越しついでに出た不要な家具。
日本だったら、引越し業者が引き取って処分してくれたりしますが……
業者に頼まないフランスはどうするんでしょう?
答え。
道に捨てる。
正しくは、道端のごみ置き場に置いておく。
そうするとどうなるか。
「あ、引越ししてるな……」と様子をうかがう人たちが出始め、
大型家具が道に捨てられるたびに物色、めぼしいものを持っていくという流れができるのです。
ゴミといっても、ちょっと古いだけで充分使えるよ!的なものは、
どんなに大型だろうとも持っていかれます。まじで。
廃棄物として出したはずの家具たちが、
捨てた数十分後には跡形もなくなっていたなんてことも。
捨てる神あれば拾う神あり……ある意味究極のリサイクルなんじゃないかと思ってしまいます。
退去の時は住み始めた時と同じ状態に
借りていた部屋から退去する時は、住み始めた時と同じ状態にし、掃除もしておく。
日本でもフランスでもそれは変わらないですよね。
しかしフランスの賃貸物件の場合、
「退去時に元の状態になっていれば、賃貸でも内装変えちゃってもOK!」だったりします。
たとえば、入居時の壁の色が白だったけど、赤に塗り替えたよ!
これも、元に戻せばOK。
そのため、引越しの時には家具の運び出しの後に壁の塗り替えをするなんてことも。
ちなみに掃除は……日本ほど厳密ではないような印象です。
私が借りていた部屋を出ていくとき、
「掃除が甘いとかで文句言われて、返ってくるはずの保証金が減らされたらやだわ」
とばかりに、全力で掃除しました。ええ、そりゃもう全力で。
清潔な日本人のプライドにかけて、床なんて舐めてもいいほどにぴっかぴかにしたわけですが……
立ち会いで来た不動産会社のスタッフは平気で土足で入り(泣)、
「すご……入居時よりきれいになってない……?」
という褒めてんだか何なんだかわからない言葉を残して去っていきました。
ところで手伝ってくれた友達にはお礼をするの?
引越し業者であれば見積もり通りの料金を払いますし、
「今日はよろしくお願いします」と当日の担当スタッフに少額を包んで渡したりしますが……
フランスで友達が手伝ってくれた場合、お礼ってどうしたらいいの?
という話。
家具の運び出しや、バンを使っての運搬をしてくれたり、
掃除まで手伝ってくれたり……
最初から最後まで手伝ってくれる人もいれば、
「空き時間ができたからちょっと手伝いにきたよ~」とほんの少しの時間手伝ってくれる人もいて、
誰がどれだけ手伝ってくれたかなんて正直わからなくなってしまいます。
手伝ってくれた時間にあわせてお礼? 何を? 現金???
大体の場合は、「ごはんをおごる」です。
夫がルームシェア解散をしたときの引越しでは、
3LDK分の家具があったため、さすがにすぐには終わらず、2日がかりでした。
1日目にあらかた運び出し、2日目は主に掃除……という感じで進んだのですが、
1日目の夜に大量のピザを頼み、お菓子や飲み物を買い出しに行き、
家具がなくなってガランとしたリビングでピザパーティー!
それがお礼でした。
(もちろん、デリバリーピザでなく手伝ってくれた人をレストランに招待することもあります。)
フランスの引越しは豪快!
日本人と比べて、何でも自分たちで済ませてしまおうという傾向が強いフランス人。
大がかりな引越しまで自力とは思いませんでした。
でも「引越しするから」というと「よっしゃあ、任せろ!」とばかりに友達が手伝いに来てくれるのは、
何だか新鮮。
日本でも友達に引越しを手伝ってもらうことはあっても、
最後は業者が荷物を運び出しということが多いのではないでしょうか。
まあ、業者が信用できないからというちょっと哀しい理由もあるものの、
自分たちでワイワイと盛り上がりながらやってしまう引越しは、割と楽しいものでした。
まあ……引越しの途中で友達同士の大げんかが勃発したりもしたけどね!
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